2020年12月30日水曜日

南国の砂浜で怪魚オオニベを追う




怪魚オオニベ。大きいものでは1.5m、30kgを超える。そんな巨大魚がいくつかの地域ではサーフから狙える、何ともロマンに溢れた魚である。近年、パターンが確立されつつあり、またサーフというエントリーのしやすさも相俟ってオオニベゲームの人気が高まってきている。


私は帰省の機会を利用してオオニベを追った。




<day1>

<day2>

<day3>

<day4>

虚無

<day5>

絶望

<day6>

………。

<day7>

<day8>

<day9>

<day10>

<day…………………………………………………………………………………………………










オオニベを狙い初めて三週間が過ぎた。




この三週間、有名ポイントに自転車で1時間かけて通った。


良さそうな地形をいくつか見つけて通い詰めた。


朝も、昼も、夜も、サーフに通った。


だが、本命からの当たりは一度も無い。それどころか小さな魚1匹すら釣り上げていない。私をもっと絶望させたのは周りの釣り人が竿を曲げているのを一度たりとも見ていないことだ。




ここは死の海だ……





そう思っていた矢先、Twitterで知り合った凄腕オオニベアングラーであるKさんとご一緒できることになった。先に言っておくと、この出会いが私にとっての大きな転機となった。





<day??>



Kさんとの釣行初日(ちなみにday??、となっているのは釣れなさすぎて10日目を過ぎたあたりから何日連続でボウズだったのかを数えるのが嫌になったからである)。


Kさん曰く、この釣りではベイトを探すことが重要であるらしい。特に、オオニベのメインベイトとなるグチ(イシモチ)の群れを見つけ出すことができればオオニベにリーチをかけたも同然であるとの話であった。


早速、Kさんが当たりをつけたポイントへと向かった。

まずは、ベイトを探るためにバイブレーションのただ巻きでベイトがゴツゴツ当たるポイントを探す。


と、こう書いてはいるが正直この話は俄には信じがたかった。ルアーに当たってくるほどのベイトの群れなど自分は体験したことはなかったし、そんなことが起こるのは年に数回程度のものだと思っていたからだ。


だが、実際にルアーを通してみて認識は180°変わった。1260°と言ってもいいかもしれない。

とにかく、そこにはベイトがいた。あまりにも当たりすぎてボトムを引いているのかと勘違いしてしまいそうなほどに。トレブルフックならしゃくればすぐにグチがスレがかりしてくる、そんな状況だ。






初めての経験にワクワクしながらバイブレーションをスローに巻く。





しばらく投げていた時のことであった。





ゴンッッ!!







リトリーブしていた手に衝撃が伝わる。だが、それはフッキングすることなく、ルアーは無事に帰ってきた。いや、無事にというのは語弊がある。フックが曲がって帰ってきたのだ。怪魚を狙うと言っておきながら弱々しい純正フックのまま釣りをするとは何ともまあ情けない…(この後、諸先輩方に叱られました…)









この日は、他の人のメーターオーバーのオオニベをランディングしたが、自分には何もなく釣りを終えた。




<day??>



さて、この日もベイト探しから始まる。





日が上るか上らないかの空が紫色の時間、ふと横を見るといきなりKさんが何かをかけている!


危なげのないファイトで上がってきたのは何と本命オオニベ!!


仄かな紫色が美しい(写真はないですすみません)



サイズは65cmほどであった。



慣れきった感じのファイトとサイズ関係なく喜ぶKさんの姿が印象に残っている。



Kさんに続けと私もルアーを投げるがなかなか当たりはない。ベイトはいるものの10歩くらい横にズレると反応がなくなるのでおそらく狭い範囲に固まっているのだろう。その日もランガンしながら1日投げ倒すも釣れたのは極小メッキだけだった。







ちなみにこの日はメーターオーバーのオオニベを引きずって帰る人や、142cmが目の前で釣り上げられるのを見た。サーフ全体で5、6本釣れていたらしい。


どうやら今年は稀に見る当たり年らしく多くのオオニベが上がっている。

自分にチャンスが回ってこないことに焦る一方で、確かな手応えを得ていた。この二日間、Kさんのおかげで魚の反応が格段に多くなった。





確実に魚には近づいている、そんな確信を持ちながらこの日は竿をたたんだ。




<day??>



この日は平日なので、Kさんとは釣りができず、単独の釣行となる。


移動手段はもちろん自転車。誰か、7年近く乗り続けてボロボロになったこの愛車に名前をつけて欲しい。






愛車のことは置いておいて、前日から当たりをつけていたポイントに暗いうちから入る。


オオニベが釣れるのは日が上ってからが圧倒的に多いが、オオニベ人気のためか平日でもサーフには人が多いため、良いポイントに入るためには暗いうちに入る方が確実なのだ。

そのせいで真っ暗な中凍えながら自転車を漕がなければならない。世知辛い世の中である。



薄暗いうちからセオリー通りバイブレーションで探っていく。ゴツゴツという感触、前日ほどではないがどうやらベイトは入っているようである。


しばらくすると、横にいた方(この人も凄腕)がジグのリフトアンドフォールでオオニベをかけた!が、しかし、しばらく走られた後フックアウト…





魚がいることがわかり、こちらのやる気も上がっていく。横の方に倣いフォールを長めに意識してリフトアンドフォールで探る。





リフト…フォール…リフト…フォール…リフト…フォール…リフ………?!?!?!






リフトしようとした動きが止められた。それは全く動かず、根掛かりを彷彿とさせた。だがそんなところに根は無い、間違いなく魚である。フッキングをキメると、やがてそれはドラグを勢いよく滑らせラインを引っ張り出していく。


糸の出方を見てドラグを少し調整するも、それはなかなか止まらない。止まってもポンピングに入るとまた糸を出される、その繰り返しだ。何度走られたことだろう、セカンドラン、サードランはゆうに超えていた(恥ずかしながらその走りと重さから途中までずっとエイだと思っていた)。


どうやら20分ほどそんなことを続けていたらしい。突如、魚の頭が素直にこちらを向いたのを感じた。そこからはサーフ特有の波に合わせたランディングの難しさに翻弄されながらも、周りの方々のアドバイスのおかげでなんとか寄せることに成功し、ランディングしていただいた。







 


オオニベ。124.5cm、17.5kg。


初めて上げたオオニベは、目標としていたメーターを20cm以上も超えていた。


確信を持って言える。Kさんを始め、出会った多くのアングラーがいなければ私はこの魚には辿り着けなかった。

だからこそ、この魚にはサイズに関係なく、自分の中でこの魚にしか無い価値を見出せる。

それは独り善がりの綺麗事なのかもしれない。だが、人とのつながりを通して見出したこの価値はたとえ綺麗事だとしても手放したくないのだ。








この地は、暖かい。


気温、水温はもちろんだが、人の暖かさがまた格別だ。


場所、資源が限られた釣りという世界は排外的になりがちである。


だが、この地の人々からはギスギスした雰囲気を感じない。誰かに魚がヒットすればチャンスタイムだろうと自分の釣りそっちのけで何人もの人が集まって来てくれる。皆が真剣に魚と向き合いつつも、外の者を受け入れようとする暖かさがある。




「ここには半分、人に会いにきてるようなものだよね。」




現地でお会いしたアングラーは皆、口を揃えてこう言っていた。



この言葉の意味が今なら分かる気がする。












                                         投稿者:2年 宮武

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